レッド・ハウス – Red House

~ウィリアム・モリスを訪ねる~

日本では装飾デザイナーとして有名なウィリアム・モリスは「アーツ・アンド・クラフツ運動の旗手」として知られています。

1859年、建築家の友人フィリップ・ウェッブによって設計されたこのレッド・ハウスは、その「アーツ・アンド・クラフツ運動」を代表する建造物としてモリス自身のために建てられた最初で最後の家です。
モリスは友人で師でもあるラファエル前派の画家、ロセッティの絵のモデルをしていたジェインと結婚して、新婚時代の5年間をこの家で過ごしました。

短い期間でしたが、「地上のパラダイス」をコンセプトに造られたこの家には、若く果敢な芸術家たちが毎日のように集い、それはやがて「アーツ・アンド・クラフツ」という大きな運動の先駆けとなっていきます。
そしてこの5年間が、モリスの生涯でも一番幸福な時代でもありました。

レッド・ハウスは、ロンドン南部のグリニッジに程近い住宅街の中にあります。
見逃してしまいそうなほど小さな入口をくぐると、緑深い小道の先にある赤いレンガ造りの建物が目に飛び込んできます。
まわりの環境からは一転して、まるでモリスの時代にタイムスリップしたような一瞬です。

表玄関に入ると、ボランティアがハウスの解説をしながら、ガーデンへと案内してくれます。
決して大きなガーデンではありませんが、モリスのデザイン思想を取り入れた心地良い空間です。
なかでもモリスの有名な壁紙のデザイン柄、「Trellis(格子垣)」のモデルとなった格子の垣根は必見。
今でも当時と同じようにローズが絡まる姿を見せてくれています。

ハウスの中は、モリスの代表的な壁紙のオリジナルを始め、ウェッブがこの家のためにデザインし、モリスが絵を描きかけている飾り棚や、彼らの手によるステンド・グラスなど、彼らが生活していた当時の息遣いがそのまま感じられる興味深い家具やインテリアに溢れています。

英国ニュースダイジェストより
内容は「英国ニュースダイジェスト連載当時のもので、現在とは異なる場合もあります」

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