ポレェズデン・レーシー – Polesden Lacey

~クイーン・マザーのハネムーン・ハウス~

英南部、サリー州の丘陵地の高台にポレェズデン・レーシーはあります。
エントランス近くの丘の上から眼下を見れば、サリーから遥かロンドンまでも一望できる壮大な眺めです。
年間の訪問者数は20万人以上、ナショナル・トラストの中でも常に入場者数ベスト5を誇る人気のプロパティです。

車を停め、緑の木立の中を散策するように進んでいくと、カントリー・ハウスとしては珍しい、淡いレモン・イエローのエドワード様式のモダンな邸宅が見えてきます。
この館内に一歩足を踏み入れれば、そこにはこのハウスの最後のオーナー、マーガレット・グレヴィルの贅を尽くした室内装飾の数々が。
これらに彩られた英国近代史の裏舞台を垣間見れば、このプロパティが英国人に人気がある理由が景観ばかりではないことが分かります。

マーガレットの父親はビール醸造で大成功を収めたウィリアム・マキューアンです。
博愛主義者で億万長者のマキューアンの財産と知性を受け継いだマーガレットは、このカントリー・ハウスを当時の政界の社交の場として提供し、政財界の接待役的な役割を担っていきます。

日本で言えば、さしずめ「料亭政治」の「女将」のような役割ですが、ここ英国ではその裏舞台は料亭ならぬ、カントリー・ハウスだったわけです。

並外れたセンスの良さとホスピタリティー精神で「ミセス・グレヴィル」として力をつけていった彼女は、やがて政界ばかりでなく、ロイヤル・ファミリーと親交を持つに至ります。

エドワード7世にその貢献度を認められたマーガレットは、1923年にハネムーンを過ごす現エリザベス女王のご両親、ジョージ6世夫妻をこのハウスに迎えます。
当時の写真やディナーのメニューなども残され、ロイヤル・ファミリー好きの英国人には興味の尽きないカントリー・ハウスです。

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